画像: Lording

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DESIGNART TOKYO 2019
KAXEL 展示レポート

2019.12.02
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イメージソースはこれまで、テクノロジーを使った表現やアイデア、デバイスの可能性などを拡張するべく、研究開発(R&D)活動を行ってきました。独自の視点と手法でテクノロジーを応用しR&D活動で生み出されたその成果は、体験型広告やエンターテインメントの演出、店舗用インターフェースなど、さまざまな体験として実現させてきました。

2019年10月18日から27日まで開催されたデザインとアートの祭典「DESIGNART TOKYO 2019(デザイナートトーキョー)」では、「IMG SRC PROTOTYPES VOL.05(以下、「PROTOTYPES」)」でお披露目した、光を遮ることでみせるメディア『KAXEL(カクセル)』をさらに発展させ、 WeWork アイスバーグ(東京渋谷区)にて展示を行いました。

環境と調和するあたらしい体験のかたち

『KAXEL(カクセル)』は、「遮光(=黒色)」と「透過(=透明)」を制御し、光学的に “隠すこと” を可能にした空間演出装置です。これまで頻繁に目にする液晶やサイネージのような装置は、概ね「発光」という仕組みを利用して、光によって形状を作ったり、演出をしたりするものがほとんどでした。そこで、情報や映像を “隠すこと” によってみせる、「遮光」を利用したこれまでにない空間演出の方法を探求した結果、『KAXEL』は生まれました。

この “隠す” 装置を使用することで体験できるのは、環境と調和した新しい光のメディアのかたち。「DESIGNART TOKYO」の展示では、路面にそびえ立つ WeWork アイスバーグのガラス張りの壁面である特徴を生かし、装置の前面を館内の鑑賞者側に向け設置することで外光を遮り、シルエットが形を表します。鑑賞者には、隠されたり見えたりする道ゆく人の往来を感じつつ、街と調和された『KAXEL』の体験をお楽しみいただきました。

人感センサーが前面にセットされているため、『KAXEL』の前に立てば、鑑賞者のシルエットに反応して影のように黒く遮光される他、プログラミングによって制御された、幾何学的な模様や人型のシルエット、データを用いたアニメーションや文字などが表示され、これまでにないスクリーンとして『KAXEL』を楽しむことができます。「PROTOTYPES」で発表したものから、より街と調和する大きなスクリーンとしただけでなく、今回は照明プロダクトとして発展させたものもお披露目。灯りを囲み側面を『KAXEL』のユニットとした小さな『KAXEL』は、横に設置されたスクリーンにその影が映し出され、影を用いた演出を楽しむことができます。

不可思議な体験が印象づけることを価値に

制作者である高野幹(デザインエンジニア)は、学生時代からインスタレーションなどエンジニアリングを駆使した様々な作品を発表してきた実績から、イメージソースとしては初のR&Dの専任として、日々開発と制作に取り組んでいます。この『KAXEL』では、5ヶ月あまりの月日を経て、コンセプトメイキングやリサーチ、デベロップメントを重ねてきました。「人は不可思議な体験をした時、強い印象を受けますが、そんな体験を作品や空間演出装置に落とし込んでいったらおもしろいのではないかと考えていました。透明なものが黒く変化する『KAXEL』は、とある環境が見えたり隠れたりし、違和感にも似た不可思議な体験ができるのではと思いました」と高野はいいます。

2019年9月に行われた「PROTOTYPES」では、ひとつの作品としてではなく、あくまでもこの技術を生かして何ができるかという観点で、主に広告やマーケティング関係者の皆様を中心にご紹介させて頂きました。今回の「DESIGNART TOKYO」では、街全体がデザイン&アートに彩られる祭典というイベントのコンセプトを彩るべく、空間演出装置としてWeWork アイスバーグ(東京渋谷区)の大きなウィンドウに設置をしました。多国籍で、デジタルリテラシーの高い利用者が大多数を占める WeWork という場所に展示をしたことで、様々な人からリアクションやフィードバックを頂いたことは、今後の活用やアップデートにおけるすばらしい経験となりました。また、人通りの多い原宿・神宮前のウィンドウに展示したことをさらに発展させ、ファッションブランドのショーウィンドウなどでの展開ができればと構想は膨らんでいます。

コンセプトに最適化されたデザイン

『KAXEL』のネーミングやロゴ、オリジナルのタイポグラフィー、プロダクト特性に合わせたアニメーションなどは、デザイナーの小山潤と石井つぐみが手がけました。『KAXEL』のネーミングは「隠す」「Pixel(ピクセル)」からなる造語。ロゴは長方形のピクセルに「K」が隠されています。今回『KAXEL』のアートディレクションを担った小山はデザインに関して「サイン、テキストなどアンビエントな何かを見せることはこれまで世の中にはあるが、“隠しているのに見せる” ことを意識した」といいます。

アニメーションに関しては、フォントグラフィックもプロダクトに最適化したものを作成。人感センサーを用いた表現の他、今回表示させたものはテキスト、サイン、パターン、キャラクター、遮光をベースに透過した箇所のみ奥が見えるものと、5ジャンル10種類。スマイリーフェイスなどキャラクター性のあるグラフィックも創作し、今後は表情に応じたアニメーション(笑っている人がいたらスマイリーフェイスを出すなど)など新たなものを想定しアップデートしていく構想です。

『KAXEL』は様々な演出が期待できる

小山は、建築を学んでいたバックグラウンドから、「この技術を窓やドアの一部に、建築的に利用できるのではないか」といいます。ブラインドカーテンとして使用して、外の人にわかるように文字を配置したり、窓やドアの一部として利用したり。窓や店舗のウィンドウに埋め込むように導入し、内外に向けた深度センサーと組み合わせれば、昼間は店内への日光の入り方をコントロールし、夜間は明るい店内の一部だけが外から見えるようにして注目を集めるような使い方も可能です。例えば「窓」に関しては、これまでもテクノロジーと掛け合わせたさまざまな応用が模索され続けています。もちろん、インスタレーションとしてもおもしろい『KAXEL』ですが今後、新たな建築のあり方を考えるプロダクトとしても発展し、スペースをつくりこむアイデアとして発展できたらと思っています。建築の知見もあるメンバーがいることも、イメージソースの強みのひとつです。

ショーウィンドウに直接吊したり、装置そのものの大きさを変えたり、箱状などにして内部から光を放ったり、様々な演出が期待できる『KAXEL』の可能性を今後も広げていきたいと思っています。

建築やインテリア関係の人が多数訪れる DESIGNART TOKYO で展示を行い、「IMG SRC PROTOTYPES」とは違う層の方々にも見ていただくことができたことは、これからの『KAXEL』の可能性を大きく広げてくれました。フィードバックやリアクションを生かし、さらなるアップデートを重ねていく所存です。今後、ユーザーに楽しんでいただけるコンテンツを世に送り出すため、具体的な活用方法の模索など共創できることがございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。